犬の訓練士マニュアル 実践!警察犬トレーニング > 実技(基本訓練)

実技(基本訓練)

ここからは、いよいよ警察犬訓練、基本の実践です。

家庭犬の「しつけ」にも役立ちますので、ぜひ覚えてください。

訓練の基本は、「犬も人も笑顔で楽しく」です。
ビクビクしながらの練習は、犬にとって嫌な時間、苦痛にしかなりません。

キーワードは、「えらい!」「大丈夫!」「上手に出来たね!」です(笑)

訓練の初歩段階は、常に長いヒモ付きで行います。

訓練に慣れていない犬は、人からの束縛を嫌い、自由な行動を取ろうとします。
万が一、自分の手を離れ、逃げだした場合でも、ヒモが付いていればそれを阻止できます。

※絶対に、無理やりさせないように気を付けましょう!
 性格に落ち着きのある子は、「基本の服従」が得意です。

停座

犬を落ち着かせた状態で行います。

落ち着かない場合は、犬と少し遊んであげると落ち着きます。

まずは、リーダーが犬の横にかがみ、「スワレ」と言いながら、犬の胸を片手で押さえます。

そして、もう片方の手で犬のお尻を優しく抱え込むように、下に抑え込みます。
その状態を保ち、落ち着くまで手はそのままです。

伏せ

「停座」の状態から、お尻に手を置いたまま、「フセ」と声をかけます。

そして、ボールなどで気を引き、少しづつ前に、前脚を滑らせるように仕向けます。
動かない場合は、背中に手を当てながら、前脚を揃えて、ゆっくり引きます。

もちろん、起き上がりそうになったら、「いけない!」と声を出して制止します。
落ち着くまでは、停座のときと同じく手はそのままです。
犬が一番、落ち着くのがこの体勢です。

休め

「伏せ」の状態から、「休め」と声をかけながら、犬の身体を横に倒します。(倒す方向は、どちらでも構いません。犬のやりやすい方向で)

自然にお腹を見せる体制になりますので、緊張状態にある場合や人の多い所では、指示に従いにくいかもしれませんが、犬にとっては比較的、楽な姿勢になりますので、教えやすい訓練だと言えます。

※いずれも犬が動作を覚え、慣れてきたら一度の指示で正確に次の姿勢に移るように訓練してください。

待て

この訓練には、様々な「待て」があります。

基本訓練では、「停座」もしくは「伏せ」の状態の「待て」を教えます。

犬が「停座」または「伏せ」ている状態のときに、「マテ」と声をかけながら、動かないように促します。

犬が落ち着いていて、動かないことを確認したら、「マテ」と声をかけながら、少しづつ後ろに下がり、距離を取ります。

犬が後を追おうとして腰を浮かしたら、犬の元まで戻ってもう一度、同じ体制を取らせ、繰り返します。

犬は最初、リーダーと離れることに不安を感じ、鳴いたり、後を追おうとしますが、少しづつ慣らしていくことで、自然に距離を取れるようになります。
(訓練大会では4歩、5歩くらい距離が取れれば合格です)

落ち着いたところを見計らって、リーダーが犬の周りを歩く、犬の上にまたがる、不意にボールを転がす、知らない人に、犬の側を歩いてもらう、など色々な誘惑を仕掛けてみましょう(笑)

それでも指示を守り通せたら、服従訓練は完璧です!

※大事なのは、犬の視界から消えないことです。

犬はリーダーの姿が見えなくなると、不安からパニックを起こし、突然走り出すなどの行動をとることがあります。

事故や住民トラブルになる可能性があるので、いなくならないように気をつけてあげましょう。

立て

ここは少し難しいかもしれませんが、必ず出来る動作なので、焦らずに訓練してあげてください。

いかなる姿勢からでも、「立つ」ことが出来るようにする、訓練が必要です。

犬が座っている場合、犬のお腹に手を差し入れ、「タテ」と声をかけながら、腰を持ち上げて、犬を立たせます。

大抵の場合、お腹に手を入れると、犬は緊張して、自然に腰を浮かせます。

もし、あまりにもリラックスしすぎていて、立たない場合は、足で、犬のお腹をポンと蹴ると、犬は驚いて立ち上がります(笑)

お腹は急所です!

招呼

犬にとっては、これほど楽で嬉しい訓練はないのではないでしょうか?(笑)

「待て」で、距離を取った犬を自分のもとへ呼び込む作業です。

「来い」と声をかけながら、犬に向かって両手を広げます。

犬は、待ってました!とばかりに、喜んで走ってきます(笑)
嬉々として飛んでくる素の姿は、最も犬らしくて可愛いです(大笑)

この時、まだ訓練中なのを忘れてはいけません!

自分のもとへ呼んだのなら、必ず、自分のもとへ来るように、訓練しなければなりません。
どこか違う所へ行ったり、自由に遊び始めるのでは、いけません!

「許可」する行為の「ヨシ」とは違います。
犬にも、メリハリを教えてあげましょう。

もちろん、全ての訓練を終え、「遊んでおいで!」と放す場合は、「ヨシ」と声をかけて、ボールを与えて、自由にさせてあげてください。