犬の訓練士マニュアル 実践!警察犬トレーニング > 実技(特別訓練)

実技(特別訓練1)

この訓練は、警察犬訓練の中でも「禁断」とされる特殊部門です。

犬の適性も関係しますので、犬の性格や行動などを見ながら、訓練を入れるかどうか決めなければなりません。

いくら優秀な犬でも、犬の素質や服従訓練の入り方次第で、訓練を入れない方がいい場合もあります。(危険が伴うため、安易に教えていい訓練ではありません!)

しっかりと「服従訓練」が入った犬のみに許された「特殊訓練」なので、教えるには十分な配慮が必要になります。

●襲撃・・・「危険人物」に対し、犬が「威嚇」しても動きを止めない「攻撃的な人物」に対して、犬をけしかける訓練です。

この訓練は、「協力者」が最も危険を伴うため、協力者の寛大な理解と、相当な覚悟が求められます(汗)

やり方を間違うと犬の性格も曲げてしまい、制御出来ない攻撃的な犬に仕上げてしまう可能性があります。

充分な知識と犬との信頼関係、しっかりした服従訓練が入っていることが条件になります。
(ちなみに協力してもらう人は、犬と面識のない人が望ましいです)

必読!要注意!!

  • 不安が残る状態では、決して行わないでください!
  • 怪我では済まない可能性があります!!
  • 「警察犬協会」の保険に加入する、などの準備をオススメします!

この訓練は、必ず長いヒモを付けて行ってください。

やり方は、まず「協力者」に、「防御衣」と「麻袋」という装備を身に付けてもらい、犬とリーダーの元へ「不審者」らしく近づいてもらいます。
不審者らしく・・って(苦笑)

リーダーは、犬にすかさず「吠えろ!」と指示を出します。

犬が吠えたら、「協力者」には一瞬、停止してもらいます。

リーダーは、「よしよし」と犬を励ましながら、「吠えろ!」と犬をけしかけます。

実技(特別訓練2)

犬が攻撃的に「協力者」を威嚇し、激しく吠えだしたら、「協力者」には驚いたように後ろに下がったり、横に避けたりしてもらいます。

犬が前のめりになって、噛みつこうとするしぐさを見せたら、リーダーは「いけない!」と声をかけ、犬を引き留めます。

「協力者」がさらに犬に近づいたら、リーダーは犬を励ましながら「吠えろ!」と強く声をかけ、さらにけしかけます。

「協力者」は、興奮した感じで声を上げたり、棒を振り上げたりして暴れます。

この時、「協力者は決して犬に直接、危害を加えてはいけません!

犬が怯みそうになったら、リーダーは「よしよし」と犬を励まし、勇気付けます。

「協力者」は、犬の近くの地面を叩いたり、リーダーの肩、頭などに棒を振り下ろすしぐさをしてもらいます。

時々、リーダーも悲鳴を上げるなど、芝居をしてください(笑)(真剣に)

犬の興奮がピークに達し、今にも噛みつきそうになるときを見計らって、リーダーは「オソエ!」と命じ、ヒモを放します。

※犬はよほど攻撃的な性格でない限り、自分から襲い掛かることはしません。  あるとすれば、自分の命が脅かされた時や、自分の大切な仲間を守る時です。  その状態の犬は、最高潮の怒りを感じ、相手に挑みかかりたい心理状態になります。  この「襲撃」の訓練は、そうした犬の「怒り」を利用した攻撃訓練なのです。

実技(特別訓練3)

犬が「協力者」に向かって襲い掛かったら、「協力者」は腕を出し、腕に巻きつけた麻袋を犬に噛ませ、しばらく犬と戦ってもらいます!

この時、かがむ、倒れるなど絶対に犬の目線より下にならないように気を付けてください(興奮状態の犬は、とても危険です!)

しばらく犬ともみ合った後、「協力者」は麻袋を放し、犬にもぎ取られてもらいます。

そうすることで、犬に優位性を植え付けることが出来ます。

そこで、リーダーは「待て」と声をかけ、犬を一度、落ち着かせます。
一呼吸置いてから、「協力者」はもう一度、犬に近づいてもらいます。

リーダーも「吠えろ!」と声をかけ続け、犬に威嚇させながら、次の機会を待ちます。

犬が自信を付け、呼吸が整ったら、リーダーは「オソエ!」と声をかけ、けしかけます。

「協力者」は、犬が腕に噛みついたら、押したり引いたりを繰り返してもらいます。

犬の牙が確実に腕に突き刺さったのを確認し、腕を持ち上げて犬を振り回したり、犬を叩く素振りをしてもらいます。

ここでは、あくまでも、犬に自信を付けさせるための訓練なので、「協力者」は犬を負かしたりすることのないよう、意識してもらいます。

実技(特別訓練4)

しばらく抵抗した後、「協力者」は動きを止めてもらい、リーダーは「ヤメ!」と声をかけます。

リーダーの指示に従わず、止めようとしない犬は、鼻先をヒモの端で叩くなどして、冷静になるよう促します。

ここで、もう1つ大事なことは、犬は「協力者」を傷つけることが目的ではなく「協力者」の怒気を抑え、動きを封じることだと教えることです!

必要以上に「協力者」を追いつめることがないよう、リーダーは適切な判断を下さなければなりません。

※「襲撃」訓練では特に言えることですが、リーダーの命令は、一度で犬がピシッと聞けるようでなくては意味がありません。
 そのためにも、訓練は日を置かず、毎日続けることです。

忙しくて時間が取れない日であっても、最低限の「基本訓練」だけは、必ず行うようにしなければなりません。

不用意な飼い方をして、間違えて人を傷つけた場合、「警察犬」として「仕事」をしている犬は、警察が絡む「処分」を要求されます!

「警察犬」は、例え「嘱託犬」であったとしても、一般家庭の犬とは違うのです。

犬に訓練を施すにしても、安易に何でも、教えればいいというわけではないのです。
犬に合った必要な訓練、自分で制御できるレベルの訓練、のみを教えてあげてください。

犬の不祥事は、飼い主の責任です。
まして大型犬は、他人から見れば「危険動物」です。

場合によっては「殺処分」という事例が、数え切れないほど、ニュースで取り上げられています。

どうぞ、不幸な飼い方をしないであげてください。
犬を守ってあげられるのは、飼い主しかいないのですから・・・。