犬の訓練士マニュアル 実践!警察犬トレーニング > 犬の能力

犬の能力

ここでは、犬の特徴を、よく知ってもらうために、犬の能力についてお話しします。
訓練は、犬のこのような能力を利用し、行われます。

犬の視力

犬の能力で、一番優れているのは「嗅覚」と「聴覚」です。

視覚は、犬の能力を左右するほど、重要な機能ではありません。
それは、犬の視力を人間に当てはめると、僅か0・1くらいだからです。

さらに、犬は色を認識できません。
なので、犬の見る世界は、全てモノクロです。

そして、明るい日中より、暗くなった夜のほうが、はっきりと対象物を捉えるため、活発に活動します。

さらに、動体視力も優れていて、動く対象物には俊敏に反応しますが、動かない対象物をはっきりと認識することは、なかなか難しいようです。

また、人と同様、自分の都合の悪い時は、絶対に人と目を合わせようとはしません。(笑)

不自然な目の動きで、バレバレなのですが、律儀に飼い主から目を逸らそうとします。(笑)

その部分だけを取り上げれば、犬も人もウソをつくのが苦手な、不器用な生き物なのかもしれません。

犬の嗅覚

初めて行く場所や見知らぬ人、見慣れないものなどを確認しようとするとき、犬は必ず匂いを嗅ごうとします。

犬にとって強い匂いは、鼻を刺激し、感覚を鈍らせます。

人間にとっていい香りだと感じる香水も、犬にとっては悪臭と感じているのかもしれません(汗)

薬品の強い匂いなら、100万倍以上に薄めても敏感に反応し、風下200m先まで認識出来ると言われます。

警察犬の訓練の中に組み込まれている特殊訓練では、犬の嗅覚が重要な役割を期待されます。

警察犬を使う捜査の中で、一番要請が多いのがこの仕事です。

行方知れずの犯人の追跡や、行方不明になった人の捜索をするのが主な目的ですが、その捜査の時に嗅ぐ匂いも、犬が自分から嗅ごうとする意識はないですから、こちらが意図した対象物の匂いを嗅がせるようにする「訓練」も必要になります。

聴覚犬の

犬の「聴覚」も、かなり優れた機能です。

眠っているときでさえ耳は動いていて、音を聞き分ける能力は、人間の約4倍だと言われます。

犬は、人間では聞き取れないような、超音波でさえ聞きわけることが出来ます。

「犬笛」と呼ばれる笛は、この犬の能力を利用して作られたものです。

さらに犬の聴覚は、人間の隠れた感情まで聞きわけます。

飼い主さんが、いくら優しい声で犬を呼んでも、本当は怒っているな、とか、飼い主さんの、普段とは違う声も、敏感に聞き分けることができます。

また、聞きなれない声や理解出来ない言葉の音、超音波に似た高い声、などに首を傾げる犬がいますよね?

それは犬が、この微妙な声の変化を察知することが原因ではないか、と考えられているためです。

また、飼い主さん以外の人が、声を掛けても知らんふりをしているのに、飼い主さんが名前を呼んだとたんに飛び起きる、ということは、よくある話です。

犬は案外、確信犯なのです(笑)

犬の時間の感覚

犬は、時計を見なくても時間の感覚が分かります。

それは犬が、自分の経験から作り上げた、独自の生活スタイルをベースにしているからです。

例えば、人間が起きる時間、ご飯の時間、散歩の時間など・・・。

いつも決まったサイクルで生活している、人間の環境にならって、犬の時間感覚は作られているのです。

その時間感覚は正確で、実際に犬を時計代わりにしている人もいるくらいです。

「犬がそわそわしてきたから散歩の時間だ」と、動き出す飼い主さんも多いのではないでしょうか?