犬の訓練士マニュアル 実践!警察犬トレーニング
犬の訓練士を目指す人のため、犬のことをもっと理解したいという人のために、
警察犬訓練大会で準優勝した経験がある私が解説しています。
犬の訓練士マニュアル 実践!警察犬トレーニング > 実技(中級訓練)
ここからは、家庭犬や他の訓練犬とは違う、「警察犬」としての訓練に入っていきます。
(家庭犬では、そこまで無理やり覚えさせなくていい内容です)
犬にとっても人にとっても、辛い訓練もあるかもしれませんが、「警察犬」として絶対に必要になる訓練ばかりです。
深い愛情を持って、犬に合わせたペースで教えてあげてください。
この訓練は、練習のときには主にダンベルを用いますが、ライター、お財布、携帯電話、新聞など、あらゆる物を犬の意志ではなく、リーダーの指示で口に咥えさせる訓練です。
犬は、自分が興味を示したものや食べ物以外、口に咥えようとはしませんから、これも根気強く訓練をする必要があります。
やり方としては犬を座らせ、落ち着かせてから、「くわえろ」と声をかけます。
最初は、犬の口より一回り小さめの咥えやすいものを犬の口元に持っていきます。
犬の目の前で振ったり動かしたりして、興味をそそるように仕向けます。
上手く咥えたら、そっと下あごに手を添え「くわえろ」と繰り返し、声をかけながら、ダンベルを落とさないように促します。
(咥えるダンベルの位置は、真ん中を意識させてください)
口から出そうとしたら、「いけない!」と制止し、そのままの状態を維持させます。
(ダンベルの端を咥えた場合は、やり直しです!)
慣れてきたら徐々に大きなダンベルや、違う物に変えてチャレンジさせます。
なかなか口に咥えない場合、少々強引ですが、犬の歯にダンベルをぶつけます。
硬いダンベルは痛いので、犬は口を開きます。
そこに、ダンベルをねじ込み、咥えたら褒めてあげましょう。
※ここで「可哀そう・・・」と、情けをかけているようでは、先には進めません!!
犬訓練士は、諦めた方がいいでしょう!
「咥えろ」の反対で、咥えたモノを出させる動作です。
やり方は、「ダセ」と声をかけながら、犬が咥えているモノに手を添えます。
無理やり引き抜くのではなく、声をかけながら様子を見ます。
もともと興味を持って、自発的に咥えたモノではないので、犬は案外すんなりと口を放します。
上手に出来たら、すかさず褒めてください。
リーダーが遠くに投げたモノを持ってこさせる訓練です。
最初は、犬が興味を持っているオモチャから始めると、喜んで追いかけるので訓練しやすいです。
ただし、追いかけさせるにも、リーダーの指示があるまでは動かないように「待て」をかけます。
ここがポイントですね(笑)
犬は自分の興味のあるオモチャを遠くに放られると、早く追いかけて行きたがりますが、そこを待たせるのが訓練なのです。
やり方は「待て」と犬を落ち着かせ、「いくよ~」とオモチャを犬に見せます。
もう一度「待て」と言い聞かせ、オモチャを放ります。
この時点で、犬が動きそうになったら、「待て」と制止します。
一呼吸置いてから「持ってこい」と声をかけ、犬をけしかけます。
犬がオモチャを咥え、戻って来るまで「持ってこい」とか「こっちだよ」と注意を引きながら、犬を自分の前に誘導し、向かい合って犬を座らせます。
オモチャは、まだ咥えたままです!
犬を落ちつかせてから、「ダセ」で、オモチャを犬から受け取ります。
※この時、あまり長い間、焦らさないことがコツです。
焦らしすぎると、犬が飽きてしまいます(笑)
基本訓練、「待て」の応用編です。
犬が何かをしているとき、ふいに「マテ!」と声をかけてみましょう。
ここでは、「動作途中の待て」を教えます。
例えば、「招呼の途中の待て」
「招呼」で、犬がこちらに向かって走ってきている途中に、「待て!」と声をかけます。
通常「動作途中の待て」では、指示を受けたその場に「伏せ」、または「停座」で静止します。
「そのまま待て」は、その時の犬の状態によって変わります。
例えば、犬が立っている場合は立ったまま、座っている場合は座ったままの状態で待たせます。
犬がその時の動作(立っていたのに座ろうとするなど)を崩しそうになったら、「そのまま!」や「立って待て」、「座って待て」、または「伏せて待て」のように動作を維持させます。
最初は犬も戸惑うかもしれませんが、すぐに慣れます。
上手く出来たら「招呼」で犬を近くに呼び、「よしよし!」と褒めてあげてください。
※「立って待て」(立止)とは、立ったままの状態で静止することです。
犬にとっては馴染みがなく、座れないため、集中力が散漫になり、落ち着かない動作になります。
※「基本訓練」を終えて「中級訓練」の段階に入り、全てが完璧に出来るようになったら、「待て」の距離を100mくらいに伸ばします。
また、犬の視界からリーダーの姿が見えないように隠れて数分置き、1人でも指示を守っていられるか、様子をみましょう。
長い時間、じっと待つことが出来るかどうかは、「警察犬訓練大会」の審査で評価される項目です。
ちなみに、この「基本訓練」の「待て」がしっかりと出来ていないと、次の段階の訓練を入れるときに響きます!
まさに「基本訓練」の要なので、ここはチェックポイントです!
この訓練は、強制的に声を出させることが難しいので、普段の遊びの中で、声を出した瞬間を狙います。
遊んであげているときに、わざと犬を興奮させ「ワンワン」と吠えたら、すかさず「ホエロ」と声をかけます。
タイミングを逃さないのが上達のポイントです(笑)
慣れてくると、サインだけで吠えるようになります。
現場で、犯人を威嚇するときなどに使う訓練ですから、根気よく教えてあげましよう。
※大人しい性格の犬は、あまり吠えないので、向かないかもしれません。
警察犬訓練大会では、「吠えろ」の審査はありませんので、出来ない子には、無理に訓練を入れなくても大丈夫です!
けしかけるサインがあるのなら、止めさせるサインも当然、必要です。
リーダーが「止め」と声をかけたら、いかなる状況のときも、全ての動作を止めさせる訓練です。 この訓練も、遊びの中で教えた方が覚えが早いです。
犬が何かに夢中になっている時に、「止め!」と強めに声をかけ、動作を止めさせます。
「止め!」といった以上は、どんな状況の時でも、動作を止めさせてください!
「夢中になって遊んでるし・・・」は理由になりません!
これは訓練ですから、指示を出した以上は、絶対に服従させてください!
「まっ、いっか~」は無しです!
一度見逃せば、犬は指示を無視することを覚えます。
「絶対服従!!」を徹底してください。
※ただし、やりすぎ注意です・・・。
へそを曲げる前に止めましょう(苦笑)