犬の訓練士マニュアル 実践!警察犬トレーニング
犬の訓練士を目指す人のため、犬のことをもっと理解したいという人のために、
警察犬訓練大会で準優勝した経験がある私が解説しています。
犬の訓練士マニュアル 実践!警察犬トレーニング > 物品看守
対象となる「物品」を犬に託し、守らせる訓練です。
(この訓練は、リーダーとは別に、協力してくれる人を見つけておくことが必要です)
やり方は、犬を伏せさせ、命令で吠えさせます。
次に、あらかじめ、犬の好きなオモチャやリーダーの匂いの付いた物などを入れておいたカバンを犬の前脚の下に置きます。
犬に「守れ!」と声をかけ、リーダーは少し離れます。
協力者に犬に近づいてもらい、カバンを盗ろうと手を伸ばしてもらいます。
(協力者には、真摯な気持ちで犬に向き合い、本気で挑んでもらいます!)
すかさずリーダーは「吠えろ!」と声をかけ、協力者を威嚇させます。
犬が吠えたら、協力者は手を引っ込め、後ろに下がってもらいます。
次に、協力者に先ほどよりも、もっと犬に近づいてもらいます。
協力する人には申し訳ないのですが(笑)・・・かなり怖いです(苦笑)
協力者が手を伸ばしたら、リーダーは「吠えろ!」と指示します。
さっきより近い協力者に犬が興奮し、立ち上がろうとした場合、リーダーは「待て!伏せ!」と声をかけ、立ち上がるのを制止します。
この時の犬の役目は、物品を「守る」ことであり、相手を「攻撃」することではありません。
何度か繰り返し、協力者が手を伸ばしただけで、犬が吠えるように訓練します。
リーダーが指示を出さなくても、条件反射で犬が吠えるようになったら、リーダーは犬の見えない場所に隠れます。
しばらく犬を一人にします。
その間、足音をさせたり、木の枝を折るなどして音を出し、犬の警戒心を高めます。
不安から犬が鳴いたり、落ち着かなくなったりしても、リーダーは姿を見せてはいけません!
協力者に出てもらい、犬がリーダーの指示なくして、どこまで物品を守りきれるか、どんなに身の危険を感じても、攻撃することなく物品を守りきれるか、訓練の成果を確認します。
途中で立ち上がったり、守るべき物品を放り出して、攻撃や逃亡を図ろうとした場合、訓練は失敗です。
実は、こういう時が一番、可哀そうで心が痛みます(涙)
ここが、訓練士として、どこまで犬を苛められるか(?)の分かれ道になります(苦笑)
犬には、リーダーの指示を厳守する服従心はもちろんのこと、例えリーダーの姿が見えなくても、それを遂行する粘り強さと、強い信念が必要です。
※私が自分の犬を訓練中に、少し意地悪な実験をしてみました。
「物品看守」を訓練中に、わざと犬の見える場所で、私と協力者が争っている姿を見せます。
犬は私を確認していますから、少し焦ってはいるものの、まだ余裕がある風でした。
今度は大きな声を出して、私が倒れた所に協力者に覆いかぶさってもらいました。
この時、私のバディは、どうしたでしょうか?(汗)
訓練中にも関わらず、犬は守るべき「物品」を放り出し、協力者に飛びかかりました!
私も驚きましたが、犬は見たことない気迫に満ちた顔で協力者を威嚇していました。
幸い、協力者に怪我はなく、犬も顔見知りだったので、少し手加減をしてくれたのかもしれませんが・・・(汗)
自分で仕掛けておきながら、ほんとに驚きました。
もちろん、この時の犬の行動は、警察犬として失格です!
キツく叱らなければなりません!!(少し、泣いてしまいました)
でも、叱られながらも、里緒菜の顔は何だか・・・嬉しそうでした(苦笑)
その日のご飯が、なぜかとっても豪華だったのは、犬が知る必要はないことです(笑)
「あの時は、ごめんね、里緒菜・・・。ありがとう・・・。」